「米系日本人」
仮に、「純粋な日本人」がこの世にいるとしよう。
先祖の先祖、そのまた先祖はずっと日本列島で生活を営んできた。
日本に生まれ、「日本文化圏」で育ち、日本語を話す。
そして、日本に戸籍があり、日本のパスポートを持っている。
こんな人が本当にいるのかどうか、はっきりと、肯定的に答えられる人はあまりいないだろう。なぜなら、それはただの概念だからだ。プラトンのイデアの具体例としては、それほど悪くない。
もし、上の三つの条件を満たすだけで、自分のことを「純粋な日本人」として紹介していいのなら、オレだって「純粋な日本人」だ。母の実家は片知(美濃市)で江戸時代からずっと和紙を作りつづけてた(注:いまはもう和紙と関わってる人はいない)。室町時代には猿楽をやっていたとか、高賀山(こうかさん)・瓢ヶ岳(ふくべがだけ)の鬼退治に関わったとか、そういう話も伝わっている。
生まれて初めてしゃべったのは日本語だ。仮面ライダーブラックとウルトラマンタロウ(再放送)はよく見たし、トランスフォーマーで遊んで、ガンプラを組んだりした。最初にやったRPGはドラクエ4で、コミックボンボンもジャンプも読んだ。カードダスを友達と見せあったり交換するのも、日常茶飯事だった。
それから、本籍は23区内で、日本国のパスポートもある。
「オレは純粋な日本人だ」という命題は、上の定義に従えば、「真」になる。でも、そう言ってくれる人はいないし、自分でもそうだとは思えない。オレのことをハーフという人もいれば、ダブルという人もいる。小さいころから自分のことをハーフとして紹介してたから、いまでも「ハーフ」を便利なことばとして使う。でも、「米系日本人」と言ったほうが実態に近いと思うことは多々ある。
たまたま、親父がイギリス・アイルランド・フランス・ドイツ・ポーランド系のアメリカ人で、親父がアメリカ大使館で申請したから、アメリカ国籍をもっているという。その割にはアメリカに住んだことがない。大学に行き始めてから「留学」という形で、一年の三分の二近くをマサチューセッツで過ごしている。
たしかに、見た目は「純粋な日本人」ではないかもしれない。それにしたって、「普通な日本人」にはロシア人とのハーフに見えるひとや、東南アジア人にも見える人など、いくらでもいるから、「日本人に見えない」なんて、大きなお世話だ。
「わたしもハーフになりたかったなー、英語がしゃべれるから」、なんて見当違いなことをいう輩もいる。「親父がアメリカ人だから英語がしゃべれる」のではなく、努力したからしゃべれるようになった、というのを理解できてない。
5歳のときにアメリカのおばあちゃんの家から地元のSouth Yarmouth Elementary School (Kindergarden:幼稚園) に一ヶ月通って、ASIJ (American School in Japan)に入学してからも二年生まではESL(English as a second language)に参加した。その上で、ASIJでの英語の授業に付いていく。そういう努力があったからこそ、英語が「できる」ようになった。レポートや論文なんか未だに書くのがへたくそだ。
「日系アメリカ人」の逆として「米系日本人」を捉えると、オレの使い方はまちがってるのかもしれない。とはいうものの、的を射ているからしょうがない。ベルギー人の母とモロッコ人の父の子供も「ハーフ」とよばれる。だから、彼らと事情が違うオレが「米系日本人」という用語を普及させたって、特に困ることはないはず。
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